塗料の技術の多くは、配合技術に関わるものです。塗料成分の配合の妙によって素晴らしい性能を実現するというものであり、公知の成分を組み合わせることによって従来にない新しいものを生み出すというものです。このような配合技術に関連する発明、すなわち、“組成物発明”に基づいて“強い特許”を取得するにはどうすればよいか。皆様がいつも考えておられることだと思います。

ここで、“強い特許”とは何かを考えてみましょう。
私たちは、“強い特許”とは、ひとことでいえば、“事業を守り育てる “ことに貢献する特許であると考えています。
競合他社の参入をしっかり阻止できる特許。
競合他社がどうしても使わざるを得ない特許。
競合他社から権利行使されたときに対抗できる特許。
このような事業を守り育てることに貢献する特許が“強い特許”と考えています。

開発した製品を守る特許も必要です。しかし、開発した製品だけを守り、他社が使わない特許を取得しても、事業への貢献はあまり大きいとはいえません。特許権はあくまで“排他権”です。他社の実施を阻み参入障壁を築くツールとして利用するべきものです。したがって、目指すべき特許は、自社でしか製造しない製品を守るものではありません。他社が実施している、あるいは、他社が実施したい製品をカバーする特許の取得を目指すべきです。

こうした特許は決して簡単に取得できるものではありません。技術の内容に深く踏み込むとともに、他社製品や業界のトレンドを考慮し、開発した技術の代替技術や、その技術が適用された製品、事業、サービスを強くイメージしつつ権利化検討を行うことが重要となります。

塗料の発明についていえば、
  • 配合技術の最適化により性能が向上した理由の本質を見極める
  • 他社の塗料製品や、塗料業界のトレンドを考慮する
  • 開発した塗料の代替品(塗料組成の変更等)を想定する
  • その塗料が適用された製品、事業、サービスを強くイメージする

 
ということを行いながら権利化の方針を考え、個別の出願にその方針を反映することが重要となります。
そのためには、塗料分野の実務力、特に組成物発明の取り扱いに関する実務力を駆使しながら、質の高い特許出願を行うことが大切です。

本ページでは、こうした質の高い特許出願を行うためのヒントを提示していきます。
(日常の業務が忙しく、申し訳ありませんが、更新は不定期になります。)

塗料の出願の多くは組成物の発明になります。組成物の発明に基づいて強い権利を手に入れるためには、組成物発明特有の実務力が必要です。明細書や意見書の巧拙によって、取れる権利が取れなかったり、本来広く取れるはずの権利が狭くなってしまったりすることがあります。

組成物発明の特許出願戦略については、このページとは別に、以下のページを作ってみました。こちらも参考になさってください。

数値限定・パラメータ発明、組成物発明の特許出願戦略
代表弁理士 速水 進治